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初めて知ったこと

  • 2018/09/23 17:42
  • Category: works
本日、靖山画廊での個展3日目です。
9月21日(金)〜10月5日(金)までです。
私は24日(月・祝)と10月3日(水)在廊の予定です。(いずれも17時まで)

個展前日にツイッターで写真をUPしましたが、こちらでも。
少し長くなります。

hashi_5.jpg

高さ85cmのハシビロコウを作りました。
今までで飛び抜けて、一番大きな作品となります。

hashi_3.jpg

個展用に最初、ハシビロコウのラフイメージを描いた時は、せいぜい30cmぐらいのサイズでした。
でも、オープンマウスにしたくてスチロール材を頭蓋骨の形に削っているとき
気がつけばほぼ実物に近いサイズになってしまいました。

hashi_2.jpg

つくった原型に革を充てて成形しつつ、目を3サイズ作ることから作業は始まりました。
あまりにも大きすぎてどれぐらいの頭になるかわからなかったから、目も多めに作ったのです。

hashi_8.jpg

自分の肩に人形の顔を預けながら作ったという経験は、初めてでした。
羽に使うためのフェルトシートを作るだけで3日間石鹸水を使い続ける、ということも初めてでした。
硬いワイヤーを徹夜で触り続ける、ということも初めてでした。
2ヶ月かけて一度仕上げたのですが自立しなくて、涙の朝を迎えたのも初めてでした。

hashi_1.jpg

最初から足の構造を見直してシュミレーションし、3日かけてコツコツと作り直した結果
ドッシリと何事もなく立つようになったハシビロコウは、突然私を助けてくれるようになりました。

長くて硬い足がついたら、仕上げの作業は困難になるかと思ったのに
急に立体としての取り回しがしやすくなりました。
そして、足りなかったボリュームを増やしたり細部を仕上げるときも
「これでどうかな?」と、この子に相談して了承を得ながら進めました。
こんな作り方は初めてで、意外だったけどとても自然なことのように感じました。

hashi_7.jpg

私にとって人形を作ることは、現実と幻想との着地点を探ることでもあったので
少し傍観しながら強引に自分へ引き寄せるのが、基本的な制作スタイルでした。
自分のためでも人形のためでもなく、誰か見てくれる人のために作る、というか。

ですので、こんなに作っているものと1on1になることもあるんだな、と
すごくおもしろいな、と初めて思いました。

同じ方向からの写真ばかりになってしまいましたが、後ろ姿も面白いので
ぜひご来場ください。全方位からご確認いただけます。

個展の人形・その12

  • 2015/11/12 00:45
  • Category: works
新作はこれでラスト。
今日、この子たちを仕上げました。

bchild_1.jpg

『おゆうぎ(1)、(2)』

お遊戯会のお披露目を、舞台袖で待つ子ども二人。
蝶々の衣装でおとなしくスタンバイしています。

bchild_2.jpg

白い表着はオーガニックコットンのボア。
やはり手触りが違います。

bchild_3.jpg

背中の羽にはシルクシフォンを布フェルトにしたものと、綿糸で格子に刺繍が入ったシルクを
挟んで作っています。

bchild_4.jpg

個展用の新作は以上ですが、あとは旧作と毛糸だまに掲載された人形で
計24点が展示・販売されます。

初日、購入希望者が重なった場合はプレビュー時間として17時より抽選が予定されています。
会期中は展示の人形がすべて揃っていますので、どうぞお気軽にお越しください。

私の在廊予定は13日(金)のみがDMに記載されていますが、時間を作って何度か
ギャラリーに行こうと思います。
その場合はツイッターでお知らせしますね。

*****

◯鈴木千晶個展

場所:東京/東銀座/靖山画廊

期間:11月13日(金)〜27日(金) 11時〜19時 日祝日定休

個展の人形・その11

  • 2015/11/10 20:07
  • Category: works
今はまだ賑やかな熱海の砂浜も、もう少し寒くなればその風景も変わってくる。
黒いコートを着る人が増えて、寒風に耐えられずビーチを歩く人もまばらになる。
砂上を歩むその足元を確認して、顔も体もうつむきがちになる。

小さく見えるその人影を、”宮沢賢治みたいだ”と何度も思った。
彼が踏みしめて確認していたのは、農耕地であったのだけど。

mrm_1.jpg

『賢二さん』

できるだけフラットな質感で、白黒写真ではない人形にしたかった。
コートのボタンは賢二の好きそうなガラスのような塗装がされたボタンを使う。

mrm_2.jpg

あの写真の賢二の腕は、ポケットに突っ込まれているのだと思っていたけど
実際は後ろ手に組まれていた。
ぐっと組まれて膝から下の足が伸び気味になった彼の姿勢からは
ひたすらスローに土を検分する様子が伝わる。

熱海の浜を歩くとき、いつも賢二さんを思い出す。
砂の感触は靴底越しでも生きている実感が、小さな砂粒の隙間から立ちのぼってくる。

これって厳密には、賢二さんを作った人形ではないのだと思う。


*****

◯鈴木千晶個展

場所:東京/東銀座/靖山画廊

期間:11月13日(金)〜27日(金) 11時〜19時 日祝日定休

個展の人形・その10

  • 2015/11/09 17:29
  • Category: works
最新の毛糸だま2015年冬号に掲載された人形を、今回の個展で展示・販売いたします。

sq_1.jpg

『雪の女王』

冬や雪や氷を女神として描かれることが多いのは、周知の事実。
絵本の挿絵では毛皮のコートをフカフカとまとった気高い女性が多いけど
寒くて冷たいほど、彼女は楽しくてしょうがないだろうと思ったので
ノースリーブのドレスをまとわせました。

ドレス生地は極薄のシルクにウールで刺繍が入った布に、4色のメリノで
フェルト化して布フェルトに。
腕のケープはウェディング用の複雑な編みが入った生地を使いました。

彼女の持つ吹雪を呼ぶ杖は、先端に天然の紫水晶が入っています。

実は普段よりもかなり小さい人形なので、実物をご覧になるのが一番なのです。
ぜひ、ギャラリーでご対面ください。

*****

◯鈴木千晶個展

場所:東京/東銀座/靖山画廊

期間:11月13日(金)〜27日(金) 11時〜19時 日祝日定休

個展の人形・その9

  • 2015/11/08 12:42
  • Category: works
ヴォーグ学園の生徒さんが、教えてくれたお話。
童話作家・安房直子さんの『あるジャム屋の話』に出てくる、鹿の娘。
森で一人、売れないジャムを作り続ける男に、美しい瓶のラベルの絵を描く牝鹿。
色の綺麗なラベルに変わったジャムは、飛ぶように売れる。


sikag_1.jpg

『鹿の娘』

読み返さずに最初のイメージだけで作ったから、お話の鹿とはかなり違う。

sikag_2.jpg

人の印象はいろいろだと思うけど、安房さんの文体や描写には私が生まれた
70年代ぐらいの懐かしい雰囲気がある。昭和文化の目覚めのような時代。

過ぎ去った日々というのは来るべき未来よりも具体性があって、ファンタジーに思える。

sikag_3.jpg

お話をぜひ、読んでみてください。




個展の人形・その8

  • 2015/11/05 15:43
  • Category: works
尽きることのない優雅な放蕩を、無意味だと毛嫌いする気持ちがあるけれど
その半面、世界観としてはフワフワのデコレーションケーキの上を雲のパンプスで
歩くようなイメージで、憧れもある。

いつか、「ロココ」をこの上なくドーンと脳天気に作ってやるさ。いつかはね。
でもその前にひとつ、小さなお嬢さんを仕上げてみました。

mdmsr_1.jpg

『マドモアゼル・バイオレット』

コルセットとボンネットに、大きなリボン。ヒールを履いても蝶を追う。

mdmsr_2.jpg

ギャザーが細かく入った極薄のシルクを黄色に染めて、布フェルトに。
髪は2種類のモヘアをコチニールで染め、タイツは染めたシルクガーゼを履かせる。
頭にはコサージュ作家さんが作った花を飾った。

mdmsr_3.jpg

明るく優雅な彼女の頭上に舞う蝶が、見えますか?

個展の人形・その7

  • 2015/11/03 16:48
  • Category: works
昨日の「おうちねこ(姉)」の続きで、今日は(妹)のほう。

cih_5.jpg

『おうちねこ(妹)』

「まりが転がっちゃった!」と腰を上げて、その行く先を目で追う。
今にも”おそとねこ”になっちゃいそう。

cih_1.jpg

この子の着物も古布で、かなり大きく派手な絞り染めが入っていますが
それは実際に見て楽しんでいただきましょう。


*****

◯鈴木千晶個展

場所:東京/東銀座/靖山画廊

期間:11月13日(金)〜27日(金) 11時〜19時 日祝日定休

個展の人形・その6

  • 2015/11/02 17:36
  • Category: works
猫って、なんとなくわかる。

自宅で飼育経験があるのは犬と猫と兎と魚類とカメと、ザリガニや越冬しない昆虫。
相手が取る私との距離が違うだけで、どの動物も生き物には変わりない。
猫の持つ距離感は、私にちょうど良かった。

特に資料見なくても作れるのは猫だけ。
猫は根本的に、猫という種類ひとつしか無いような気がしてしまう。

「内猫?外猫?」と飼猫の飼育環境のことを尋ねたりするけれど
この人形はずっと家の座敷にいるかんじです。

cih_2.jpg

「おうちねこ(姉)」

三毛猫の姉さまは、すまして座っております。

cih_4.jpg

三毛猫には着物の古布がよく似合う。

cih_3.jpg

足袋も履いております。
明日は(妹)をご紹介しますよ。


*****

◯鈴木千晶個展

場所:東京/東銀座/靖山画廊

期間:11月13日(金)〜27日(金) 11時〜19時 日祝日定休

個展の人形・その5

  • 2015/11/01 11:48
  • Category: works
細くて丸い組紐を見ると、着物姿の人形が作りたくなる。
人形の着物用素材を揃えるときに一番むつかしいのは、帯締め。
ちょうど良い太さで使える色で、細かく糸が組んであるもの。
ゴムみたいにビヨーンと伸びちゃうと着物が台無しだし・・・

女の子を作ることのほうが多いから
平組ではなく丸組の紐で好みの色があれば、迷わず買うようにしている。

koten_alc_3.jpg


『アリス』

ぬいぐるみの兎は、遊び相手。

koten_alc_2.jpg

かんざしにはシルバーとアメジストのパーツ。
こらこら、そんなにトランプ散らかしちゃダメでしょ。

koten_alc_1.jpg

個展の人形・その4

  • 2015/10/30 16:55
  • Category: works
私の誕生月は1月です。
1月にはいつも、祖母が丹精した庭に水仙が咲いていました。

極寒の中で咲く水仙はとても繊細そうに見えて、きっと人が手を入れなければ
育たない花なのだろう、とずっと思っていました。

ところが。熱海に来てから、山肌に小さくスッと一輪だけ咲くその姿を見て
ああ、そうではなかったんだ、と。
散歩がてら必ずその道を通っては、その凛とした小さな白い花を確かめていました。

suisen_1.jpg

『水仙』

時には熱海の強い風に吹かれながら、根が動かない植物であっても
毎日何かを見て感じながら、生きているような気がしたのです。

suisen_3.jpg

たくさんじゃなくていいの。
たったひとつの花が、それでも教えてくれることがあるんだね。

suisen_2.jpg

ずっと私の胸に焼き付いていた、冷たい空気の記憶。

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    人形を作るための、メイキング・ブログ。
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